新潟県民おなじみの猫ちぐら

「わらのかまくら」のような籠から、ひょっこり顔をのぞかせる猫たち。一度入るとぐっすり眠ってしまうこともあるという「猫ちぐら」は、 ペットハウスだけでなくお部屋のインテリアとしても好評な新潟県の民芸品です。 「猫ちぐら」は100%天然の稲わらを使用しているので、保温性が高く通気性に優れており、冬は温かく夏は快適なのが特徴です。稲わらを手作業で丁寧に編み込んでいくため、ひとつ仕上げるのに約1週間~10日かかるそうです。かまくら型で側面に開口部があるタイプが一般的ですが、作り手によっては天井に開口部が設けられているタイプもあります。

子どものゆりかごから生まれた素朴な芸術品

「猫ちぐら」の始まりは、わらで編んだ赤ちゃん用のゆりかごだといわれています。乳飲み子のいる農家では、このかごに赤ちゃんを入れ、畑仕事へ連れていったのです。 関川村において、赤ちゃん用のゆりかごだった「ちぐら」が猫のペットハウスになったのは、村の豪農の番頭が愛猫のために製作したのがきっかけだと伝えられています。浮世絵師の三代目歌川広重(1842年~1894年)が「猫ちぐら」に入った猫の絵を描いた記録もあり、1878年に出版された雑誌『魯文珍報』掲載の「百猫画譜」第八号に掲載されています。 また「深川江戸資料館」に再現されている深川の町家(天保年間)に、上部が開口し側面に窓が付いた「猫ちぐら」が展示されており、江戸時代から使われていたことがうかがえます。

作り手の見事な手さばきが見られる「猫ちぐら」の製作実演

かつては「猫ちぐら」を含め、どこの農家でもさまざまなわら細工が作られていました。雪深い新潟県においては農閑期の大事な仕事だったことでしょう。失われつつある日本の文化と技術を積極的に伝承しているのが、新潟県岩船郡関川村「猫ちぐらの会」です。猫ちぐらの会では、猫ちぐらの製作・販売を中心に「道の駅関川」での実演も行っており、さらに愛犬のペットハウス「犬ちぐら」や「おひつ入れ」といった作品も手掛けています。 新潟県のわら細工には、日本各地から注文が寄せられています。ただ、作り手の減少によって製作に時間がかかり、後継者の育成が望まれているそうです。先人の知恵と技術を凝縮した素朴な芸術品ですから、後世に伝えていってほしいものですね。