明治天皇御大婚二十五周年奉祝にも献上された新潟の逸品

「鎚起(ついき)」とは鍛金のひとつで、金や銀、銅、錫などの金属を打ち延ばして裏面から叩き、浮き彫り風に装飾をほどこす技法のことです。その中でも新潟県燕市と三条市では、銅に加工を施した「鎚起銅器」が伝承されています。 鎚起銅器は一枚の銅板を槌で打ち伸ばしたり縮めたりして皿状から筒型へ、さらに袋形へと継ぎ目なく成形していきます。その間に銅が硬くなるため、焼き鈍し(火炉に入れて軟らかくすること)を行い、これらの作業を交互に繰り返しながら形が完成します。これを打出、片切掘り、象嵌、煮込み着色といった彫金の技術で装飾し、日常で使われる食器や茶器、鍋から美術工芸品まで様々な作品へ作り上げるのです。 燕三条では江戸時代初期から、「間瀬銅山」から採れる潤沢な銅で和釘作りが行われていました。江戸時代中期になると、仙台から銅器製法が伝わり、やかんなどが作られるようになったのが鎚起銅器の始まりだといわれています。 当初は日常用品として作られてきましたが1873年のウィーン万国博覧会を皮切りに、数多くの博覧会に出品されるようになります。1894年、「明治天皇御大婚二十五周年奉祝」には一輪花瓶が献上されるほか、次第にその銅器の価値が高められていったのです。

健康にも良い「鎚起銅器」の主な特徴

鎚起銅器の特徴は熱伝導率の高さで、お湯がすぐに沸きやすく鍋であれば熱が容器全体に均一に伝わります。また耐食性に優れているため、丈夫で長く使えることに加え、使い込むほどに味が出て経年とともに色の変化も楽しむことができます。さらに銅は殺菌作用があるため、花瓶に用いると花が長持ちするそうです。やかんや鍋、茶筒など、江戸時代から作られてきた製品ももちろん良いのですが、近年はタンブラー、プレート、ワインクーラー、ぐい飲みなど、新たなデザイン商品も人気を博しています。 なお、「鎚起銅器で飲み物を口にすると味わいが違う」「鉄分同様、銅は貧血防止など健康にも良い」というメリットもあるそうです。 「鎚起銅器」を長く使うには、お手入れが欠かせません。表面に水気・塩気・酸気などの汚れが付いたままにしておくと緑青(銅の錆び)が発生します。汚れた場合は早めに洗い(基本的には水洗い。汚れがひどい場合は食器用中性洗剤で軽く手洗い)、よくすすぎ、柔らかい布で拭きます。表面にキズが付くので、磨き粉やたわしなどは使用しないようにしましょう。また1日1回、柔らかい布で乾拭きすると、徐々に良い艶が生まれます。

老舗ではワークショップなども開催

近年は、既製品を販売するだけでなく、工場見学、ぐい飲みや小皿など、オリジナルの鎚起銅器を作成するワークショップも開催されています。職人が直接指導する老舗もありますので、興味があれば「鎚起銅器」作りに挑戦されてみてはいかがでしょう。