中国の「堆朱」「堆黒」から生まれた独自の漆器

「村上堆朱」とは彫漆の一種で、新潟県村上市で製作されています。楼閣山水をはじめ、人物花鳥、綸子文、麻の葉文、雷文といった文様を木地に彫刻し、朱漆を塗り重ねるという独特の技法を用います。これは鎌倉~室町時代にかけ、中国から伝わった「堆朱(剔紅)」「堆黒(剔黒、堆烏)」の流れを組むものですが、中国の堆朱は、朱漆(堆黒の場合は黒漆を使用)を塗り重ねて厚い層を作り、ここに文様を彫刻するという点で工程が異なります。 日本で製作されるようになったのは室町時代以降で、後に堆朱の技法を守る家系となる堆朱楊成が、1360年に日本で最初の堆朱を作ったと伝えられています。 村上市の堆朱は江戸時代中期、江戸の村上藩邸に勤めていた武士たちが武家のたしなみとして木彫りの技術を学び、それが村上市の漆塗りと結びついたのだそうです。1804~1830年には、江戸詰であった村上頓宮次郎兵衛が堆朱の名工、玉楮象谷(讃岐国高松出身の漆工職人。漆工技術、特に彫漆の発展に貢献)に彫刻を学んだとされ、そこで知り得た漆工が村上市に伝えられたとされています。また、藩主もそれを奨励したことで、町方の職人にも伝わっていったとの説があります。

村上堆朱のできるまで

長く技法を守り続けてきた村上堆朱は1955年に「新潟県無形文化財」となり、1976年には国の「伝統的工芸品」に指定されました。 現在では「堆朱・堆黒」「朱溜塗」「色漆塗」「金磨塗」「三彩彫」という6種類の技法をもって「村上木彫堆朱」と呼んでいます。

    1. 木地作り(木地師)

 充分に乾燥させた朴や栃、桂の木を用いて元となる木地を作る。

    1. 下絵描き(彫り師)

毛筆書きを基本に、木地の正面に彫刻の目安となる下絵が直接描かれる。

    1. 木彫り(彫り師)

下絵の上から木彫を行なう。

    1. トクサがけ(塗り師)

サンドペーパー(古くはトクサを使用)で研磨する。

    1. 木固め(塗り師)

生漆に紅殻を少量加え、漆を木地全体にしみ込ませる。

    1. 錆つけ(塗り師)

生漆と研の粉を調合し、彫刻の無い無地部分に2~3回塗る。

    1. 錆研ぎ(塗り師)

砥石を使って塗面を水研ぎをし、錆つけと共に2~3回繰り返し、錆つけ後に最低数日間は乾燥させる。

    1. 中塗り(塗り師)

彫刻された模様を漆で埋めつぶさぬようにタンポや指頭で漆をたたき、刷毛で塗りあげていく。

    1. 中塗り研ぎ(塗り師)

「村上砥石」という天然石の砥石や水ヤスリで塗り師が丹念に水研ぎを行う。

    1. 上塗り(塗り師)

中塗り同様、彫模様を埋めないようにタンポや指頭で漆をたたき刷毛で朱漆を塗っていく。

    1. 艶消し(塗り師)

艶のある塗り肌を木炭や砥の粉で水研ぎし、渋く落ち着きのある塗り物に仕上げる。

    1. 毛彫り(彫り師)

葉脈、羽毛、山肌などの表現に対し、木彫を補うための細かい彫刻を施す。

    1. 上摺り込み(塗り師)

生漆に少量の紅殻を加え、器物全体に刷毛ですり込み、艶消しのしっとりとした風合いが出て完成となる。

以上のような細かい工程を経て完成した村上堆朱は、調度品から普段使いの食卓品まで様々な商品が揃っています。主な商品は「茶托」「菓子皿」「飾鉢」「茶筒」「箸」などです。

体験教室で村上堆朱に触れてみる

村上市では、村上堆朱の魅力を知ってもらうために一流の彫り師を招いて「木彫体験」「箸作り体験」などの教室を開いています。彫ったものは塗師が仕上げ、後日完成品を届けてくれるそうです。新潟県村上市の伝統技術を体験し、思い出に残るものを作ってみてはいいかがでしょうか?