豪雪地帯だからこそ発達した「着物」の産地

新潟県では冬の農閑期の手仕事が盛んに行われており「夏は米を作り、冬は着物を作る」という生活が中心だったといいます。どうして「着物」が選ばれたのかというと、雪国ならではの自然や気候風土は織物用の素材や原料を育み、雪どけの豊富な地下水は染色に適していたからです。このような環境を背景に「雪さらし」や「雪中貯蔵」といった独特の技術も生まれ、農閑期の着物作りは新潟県各地の農村でさらに発展していきます。

新潟県における織物の歴史はかなり古いです。よく知られているのは、縄文時代前期(約7000~5500年前)頃から作られ始めた「アンギン」と呼ばれる編布(編み物)で、「カラムシ(苧、苧麻)」や「アカソ」、「ミヤマイラクサ」などの植物繊維を細い縄やひもに加工し、「もじり編み」という技法(すだれ・俵・畳を編むのにも用いられる)を用いて布や袋物にしていました。

その後、新潟県では「越後布」と呼ばれる「麻織物」が作られるようになります。始まりは定かではありませんが、現存している最古のものは、天平時代(聖武天皇の時の年号。729年~749年)に建てられた正倉院(奈良・東大寺にある皇室の宝物を収めた倉庫)に所蔵されています。

当初、越後布の主産地は、雪深い山間部の魚沼や頚城(くびき)地方でした。原料となるカラムシを育成しやすく、雪の性質を利用した布地の漂白方法「雪さらし」にも適していたからです。繊細で軽やかな風合いを持つ越後布は、皇室や大名への献上品にも用いられるなど高い評価を得るようになりました。

なお、江戸初期の寛文年間、小千谷(おぢや)に住み着いた明石浪人・堀次郎将俊(ほりじろうまさとし)が越後布に改良を加えて完成したのが「小千谷縮(おぢやちぢみ)」です。越後布との違いは、緯糸(よこいと)に強い撚りをかけ湯もみをしているため布が縮み、生地の表面に「しぼ」といわれる独特の風合いが出ることです。
堀次郎将俊がこの製法を公開伝授したことで、各生産地の産量は急激に増加しました。問屋制度も確立し、越後の産業に革命的な成果をもたらしました。

新潟県に伝わる伝統的な「染織物」

新潟県内では、地域の風土や気候に応じて、さまざまな染め織物を生産しています。代表的な織物には、次のようなものがあります。

十日町友禅(とおかまちゆうぜん)

「十日町明石ちぢみ」「十日町絣」に加え、1955年頃から新たな試みとして、 京都から友禅染の技術を導入したのが始まりです。京友禅の技法を取り入れていることもあって、加賀友禅や東京友禅に比較すると、より華やかな意匠と色合いが特徴で、現在では「おぼろ染」や「辻が花」の技法も導入されています。

塩沢紬(しおざわつむぎ)

南魚沼市で古くから生産されている織物です。生糸か玉糸の経糸、真綿手紡ぎ糸の緯糸を用いて高機で手織りしていきます。経緯各1本ずつの絣糸で、細かい十字や亀甲の文様を織り出す「蚊絣」(かがすり)が特徴です。白、藍、黒などの落ち着いた色合いが多く、男性にも好まれており、1975年に伝統的工芸品に指定されました。

本塩沢(ほんしおざわ)

塩沢紬とともに塩沢産地の代表的な織物です。かつては「塩沢お召」の名で呼ばれていました。始まりは江戸時代中期と伝えられ、緯糸に強撚糸を使うという麻織物の技術・技法を絹に生かし、さらりとしたしぼを演出している特徴を持ち、1976年には伝統的工芸品に指定されました。

小千谷紬(おぢやつむぎ)

新潟県を代表する「小千谷縮」の優れた技術を生かし、江戸時代中期に織り始められた絹織物です。絹ならではの光沢感となめらかな手触り、軽くて温かみのある風合いが特徴となっており、ちょっとした外出着などに最適だといわれています。

十日町絣(とおかまちがすり)

19世紀の中頃、伝統的な越後縮の技法を絹織物に転用したことが起源です。十日町を主産地とする絹織物で、「十日町紬」(とおかまちつむぎ)とも呼ばれる。先染めされた絣糸(かすりいと)と縦糸と横糸が織り成す繊細な絣模様が絹独特の艶と結び付き、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。1982年、伝統的工芸品に指定されました。

十日町明石ちぢみ

播磨に伝わる「明石ちぢみ」に参考に、職人たちが研究を続け、十日町で織られていた「撚透綾」(よりすきや)を改良した織物です。十日町絣と十日町明石ちぢみは、同じ技法で織られる先染め織物ですが、糸をねじりあわせる「撚糸」の方法が異なり、明石ちぢみは緯糸に強撚を加え、湯もみをして独特の「しぼ」をつくり出しています。セミの羽のように透き通った織物で、夏着尺の代表とされており、1982年、伝統的工芸品に指定されました。

越後上布

十世紀初期編纂の『延喜式』にも残る、新潟県を代表する平織の麻織物「越後布」のうち、上質のものをこう呼びます。麻を細密に手で紡ぎ、居坐機織り、雪ざらしをして仕上げられた生地は通気性に富み、涼感あふれる夏の衣料として知られています。主な産地は小千谷、十日町、塩沢町です。

古くからの「伝統」を伝える魅力溢れる街

新潟県内には、越後布の技術を今に伝える土地が少なくありません。中でも十日市は「織と染」両方を生産する全国有数の総合産地です。友禅染めをはじめ、絞り、草木染め、紬、絣など幅広い技法が受け継がれ、多種多様な商品を生産しています。

十日市では、毎年春(2019年は5月3日(金・祝))、「十日町きものまつり」を開催しています。きものの貸出しや着付けを行う「きものの里をきもので歩こう」をはじめ、「きもの掘り出し市」「十日町きもの女王撮影会」などのイベントに加え、「十三詣り」や「稚児行列」などの伝統行事も行われます。

雪国だからこそ発展した織物技術、そこから生まれた着物文化を十日市で体験してみてはいかがでしょう。にいがた就職応援団CAREERではこれからも、新潟県で育まれた古くからの文化をお伝えしていきます。